一年に何百本も映画を見るような映画マニアではないけれど、自分の備忘録として観た映画の感想を書き記していこうと思います。
■基本データ
「后来的我们」
公開 2018年4月
監督 刘若英
脚本 袁媛、何昕明、潘彧、安巍
出演者 井柏然、周冬雨、田壮壮 ほか
■見た場所
上海の映画館
■感想
中国語の勉強を兼ねてちょくちょく中国映画を見ています。
「后来的我们」は恋愛映画ということで足を運びました。恋愛映画好きというより恋愛映画はストーリーが割合簡単で使われている中国語も日常的で理解しやすいからです。つまり中国語学習にはうってつけだと思うのです。
そんな理由で映画館に足を運んだのですが、結果から言えば良い映画だったと思います。エンディングを除いて。
ストーリーは、かつて恋人同士だった二人が、飛行場で偶然再開することから始まります。
井柏然演じる林见清はビジネスで成功しているらしくファーストクラス、周冬雨が演じる方小晓はエコノミーでおそらく普通の労働者。
ふたりが出会ったのは、10年くらい前の春節。帰省のための汽車の中。当時大学生。卒業後、電気屋で働きながらボロアパートで同棲始め、林はゲーム作りで成功しようとあがくも、途中違法DVDで逮捕されゲームでも芽が出ず荒んでいきます。その結果、周冬雨が演じる方小晓にフラれてしまうのですが、その時から林はよりゲーム作りに打ち込むようになり、発表したゲームが大手メーカーと提携(提携?買収?)できるようになるまでの成功を掴みます。
場面が現代に戻って、林に家族がいることが判明して、ふたりは再び別れ、エンド。…というのが大まかな流れです。
この映画、ストーリーそれ自体はありふれたものだとは思うのですが、男女の過去を振り返りながら、改革開放後、近代化に突き進む中国の様子も同時に映していきます。これを、過去の中国を再現するために作り込まれたセットが映画に説得力を与えていて、率直にいって感心しました。
日本人が見ればきっと「ちょい昔の中国」や「田舎の春節」などの中国の風俗を窺い知ることができると思うし、中国人であれば、過去と現代の場面を比較し「中国も発展したよな、おれたちがんばってきたなぁ。でも田舎もいいよなぁ」とノスタルジーに浸れる仕掛けになっているのでしょう。
しかし、良かったのはラストシーンまで。
エンドロールでは、映画とは関係ない一般人数人にインタビューするというテイで、別れた恋人に向けたメッセージを書いたボードを掲げる場面が映し出されます。このシーンをわざわざ映さなくても観客がそれそれ心の中で思ってることだろうに。いきなり現実に引き戻されるので余計なことするなよと思いました。
その後さらにコンサートの場面。監督は実は歌手出身で自身のコンサートで「后来(Kiroroの「未来へ」)」を歌ってる場面です。監督が歌手で姿を知っていればすぐ理解できるのでしょうが、自分には「?」。理解できても明らかにこの場面は不要で、映画の余韻ぶちこわしです。
調べれば歌詞はオリジナルとは違って過去の恋人を想うという内容。映画に沿っていると言えなくもないですが、であれば、劇中に使うなどして関連づけることも出来たはずなんですが、まったく関係ないものに見えてしまいます。単なる自己顕示というか。無粋ですし雑な演出だと思います。文字通り「蛇足」になってます。
中国ではエンドロールが始まると、観客は席を立ってさっさと帰ってしまうのですが、この映画に限ってはそうした方がかえって余韻を楽しめたのではないかと思います。
ホントに惜しい映画でした。